沖縄から北海道まで、全国各地で生産されている日本茶。煎茶・和紅茶・ほうじ茶・番茶・玉露・抹茶など、その数は無数にあり、製法や味わいもさまざまです。
その中から、自分好みのお茶を見つけ、一つのお店でまとめて買うことができたら今以上に便利で楽しい日本茶ライフが送れるかもしれません。
日本茶ECサイト「ユノミライフ(Yunomi.life)」は、お茶好きのそんな願いを叶えてくれるサービスです。
常時1,000種類ほどの良質なお茶を取り揃え、サービス開始から10年以上にわたって世界中の日本茶好きを虜にしてきました。
そのワールドワイドなサービスが今、北米やヨーロッパだけでなく、日本国内にも力を注いでいるといいます。
これまでは海外向けに英語での情報発信が中心で、謎めいた部分も多かった「ユノミライフ」。これから国内の日本茶ファンに、どんなハピネスをもたらしてくれるのでしょうか。期待が高まります。
まるでお茶のAmazon!日本茶の総合通販サイト「ユノミライフ(Yunomi.life)」
2013年に誕生した日本茶専門の通販サイト「ユノミライフ」。「日本茶の農家・生産者と全世界にいる日本茶ファンを繋げること」をミッションに、全国津々浦々でお茶づくりに励む150以上の生産者と取引を行い、1,000種類におよぶ商品を扱っています。
現在、「ユノミライフ」のユーザーの9割が海外在住者ですが、日本語に対応しているため、少しずつ日本国内の利用者が増えているといいます。
ユーザーは茶種やフリーキーワードから好みの商品を検索・購入でき、世界のどこに住んでいてもおいしいお茶が手に入ります。商品は最小で10gから購入できるものもあり、ユーザーは平均5〜6点のお茶を一度に購入し、飲み比べを楽しむ人が多いといいます。その豊富な選択肢と便利さは、まるで世界的なECサイト「Amazon」のよう。

商品を購入したユーザーによる「レビュー」では、そのお茶の旨み・甘み・苦み・渋み・香ばしさといった細かな項目に対する評価も見ることができます。ユーザーが積極的にレビューを残し、客観的な情報が充実していることも「ユノミライフ」の魅力です。

「本物の日本」が消えないように。ユノミライフ創業ストーリー
「ユノミライフ」を運営するのは東京・品川区にオフィスを構える株式会社ユノミライフです。創業者であるイアン・チュンさんはハワイ出身のアメリカ人。日本が誇る伝統産業のひとつである日本茶の世界に魅せられた一人です。
アメリカの名門大学8校からなるアイビーリーグのひとつ、ブラウン大学で勉学に励んだイアンさん。大学時代は天文学者を目指して勉強するなか、たまたま日本の作家・村上春樹と川端康成の小説に出会ったことで、日本の文学やコンテンツ、食など日本文化全般に深く傾倒していったそうです。
「初めて日本を訪れたとき、食べるものすべてがおいしくて感動したのを覚えています。私には日本が合う!と、そのとき直感的に感じましたね」とイアンさん。

ブラウン大学を卒業後は日本に拠点を移し、国際交流事業や雑誌編集の仕事を経験。さらに上智大学の大学院に入学し、そこで取り組んだ修士論文をきっかけに、マーケティングと文化の深い繋がりにおもしろさを見出し、マーケティングの仕事を本職とするようになりました。
そして、ようやくお茶との出会いが訪れます。
2010年、友人の繋がりでとある京都の茶農家と知り合ったイアンさん。その茶農家の海外展開のためにマーケティング支援を行うことになりました。ホームページの制作や検索エンジンへの対策が主な仕事でしたが、そこであることに気づきます。

「農家の方は、自分のやっていることは “特別ではない” と思いこんでいることが多く、お茶づくりの背景を自ら話そうとはしませんでした。ですが実際に話を聞いてみると、大変な努力をしていたり、ユニークな工夫があったりするのです。なのでそういったストーリーをお客さまに丁寧に伝えることから始めました。すると、その農家のお茶の魅力が自然と伝わるようになってったんです」
さらにイアンさんはこう続けます。
「茶農家の近くにいると、なんといいますか…… “本物の日本” を感じるんですよね。日本は土地が狭いので、自分たちが住む地域のなかで小さく営んでいれば生きることができた。その閉ざされた環境が、 地域の深い繋がりや崇高な職人を育んだのではないかと思います。昔ながらの住まいや暮らしを続けながら、日々お茶と向き合う。そんな光景にとても心惹かれましたし、多くの茶農家の力になりたいと思いました」
その後、複数の茶農家や茶工場との協業を経て、2013年、より多くの生産者に対して継続的な販売支援ができる仕組みづくりを目指し「ユノミライフ」が誕生しました。
Yunomi.lifeが取り扱うお茶の基準とは
ユノミライフのオフィスに伺うと、生産者やサイト利用者からは見えない裏側の業務に励むスタッフの姿がありました。
商品の受発注や発送作業を担当するスタッフをはじめ、広報・マーケティング担当者、SNSを運用するクリエイター、サイト開発を手がけるエンジニアなど、国籍も多様なさまざまなメンバーの力が結集し、「ユノミライフ」は運営されています。

「ユノミライフ」で扱うお茶はすべて、同社独自の選定基準(以下3つ)をクリアしたものです。
①価格と味のバランスがとれていること
②オリジナリティや作り手の想いが感じられること
③従業員数100人以下の会社(小規模生産者)が生産したものであること

上記の基準を満たしECサイトで販売されるお茶は、販売ページに商品ごとの基本情報が掲載されるのはもちろん、生産者の紹介に特化したページも設けられています。

販売において「人から人へ」をポリシーに持つ「ユノミライフ」は、生産者のお茶づくりにかける情熱や独自の工夫をあますことなく伝えることで、ユーザーに「その人がつくったものを飲んでいる」ことを実感してもらいたいのだとイアンさんは話します。
「今後さらに多くの生産者と協業し、1万点の商品を扱いたいと考えています。この話をすると、狂ってるんじゃないかって言われますけどね(笑)」と意気込むイアンさん。
まだまだ新しい取引先を探しているので、「ユノミライフ」に興味のある生産者の方はまず気軽に連絡してほしいとのことです。
ライトユーザーにおすすめの「お茶のサブスク」も展開
「ユノミライフ」に並ぶお茶の数は1,000点以上。商品が多くて選べない……という方には、サブスクリプションサービス「お茶の旅」がおすすめです。
「お茶の旅」に申し込むと、プロが厳選した、毎月テーマの異なる4種類の茶葉(10g)が自宅に届きます。テーマは品種や産地などさまざまな切り口があり、飲み比べをしながらお茶の世界を深く学び、楽しむことができます。
また一つの茶葉につき一枚のポストカードが付き、そこに飲んだお茶の感想を書き留めることができるのも魅力。記録としてポストカードをコレクションすることも「お茶の旅」の醍醐味です。
「クラフティング」が日本茶ファンを増やすきっかけに
サービスをリリースして10年以上が経ち、改めて日本国内の盛り上げに力を入れていきたいという「ユノミライフ」。その理由を伺いました。
「きっかけは、世界で起きている抹茶ブームです。会社を創業したときは、世界中に日本茶が広がれば小規模生産者のためになると思っていたのですが、現実は少し違いました。小規模生産者は海外からの大量注文に対応できる生産設備や、輸出に必要な安全性を証明する体制が整っていないことも多く、世界的な抹茶や日本茶のブームの恩恵は、小さな生産者にはあまり届いていないと感じました。それなら、国内を盛り上げることで日本人のお茶ファンを増やし、小規模生産者のお茶を日本人が買うようになることの方が重要なのではないかと考えたんです」

そう考えるようになったイアンさんが国内向け事業の強化を見据え、2025年にオープンしたのが東京・武蔵小山にある「ユノミライフ スタジオ」です。
お茶好きが集う「コミュニティ」もしくは「実験室」として、お茶の楽しみ方を探り、体験することを目的に、日本茶の勉強会やイベント、ブレンド体験のワークショップを定期的に開催しています。
さらに、ここでは”クラフティング”と呼ばれるお茶の楽しみ方も提案しています。

「ただお茶を飲むだけではなく、お茶を作ること=クラフティングの楽しみを伝えることを意識しています。日本茶にそれほど興味がない人でも、クラフティングを切り口にすればおもしろさを感じてくれる人もいるはず。そうして日本茶に興味を持つ人やもっと勉強しようとする人を増やしていけたらうれしいです」
そう話しながら、和紅茶にローズマリーなどを加えて即興でクラフティングを行い、ブレンドティーをつくるイアンさん。
いただくと、ブーケのような華やかさと清涼感が新鮮!こんなお茶を自分の手で作れたら……。
世界中のお茶好きと一緒につくる未来
懸命にお茶づくりを続ける小規模生産者を支えるため、オンラインとリアル、日本と海外を横断し、ユーザーと一体となって成長する「ユノミライフ」。今後、より魅力的なお茶の購買体験をユーザーに提供するため、イアンさんはどのようなビジョンを描いているのでしょう。
「多くのユーザーが書き込んでくれている“レビュー”、今後はこれらを活かした、より便利で納得感のあるサイトづくりをしていきたいと思っています。例えば、私たちの主観的な評価ではなく、レビューの評価に基づいて“おすすめ商品”を提案するなど……。ユノミライフでお茶を買った方は、“一緒にサイトづくりをしている” という感覚で積極的にレビューをしてもらえたら嬉しいです」

最後はお茶の入ったグラスを持って……
「お茶好きのみなさん、ぜひ私たちと一緒に日本茶を広めていきましょう。そして、全力でお茶を楽しみましょう。カンパイ!」
※記事中の数字・情報は2025年4月時点のものです
取材・文=市原侑依
写真=鈴木智哉
ユノミライフ
https://yunomi.life/ja
ユノミライフ インスタグラム公式アカウント
https://www.instagram.com/yunomitea/