2023年11月23(木)、東京・新橋 茶業会館にて「第72回 東京都茶審査技術競技大会 理事長杯争奪戦」が開催されました。
東京都茶協同組合に加盟する若手組合員を中心に組織されている「東京茶業青年団」が、茶鑑定技術向上を目的に毎年開催しています。
本大会ではお茶を飲んでその産地や茶種を当てる競技「闘茶」が行われました。
72回目となる今回は「東京茶業青年団」のメンバーと、その関係者ら16名が参加。最年少の小学5年生から最年長70代と幅広い年代が集い、真剣勝負が繰り広げられました。
今回の大会で優秀な成績を収めると闘茶の全国大会である「全国茶審査技術競技大会」に出場することもできます。
1953年より年に一度開催される「全国茶審査技術競技大会」では初段から十段までの成績が付与されます。最高段位を獲得した茶師は通称”茶師十段”と呼ばれます。全国で二十数名しかおらず、茶業界で高く評価されています。
「第72回 東京都茶審査技術競技大会 理事長杯争奪戦」の開会は午後13時過ぎ。
茶業青年団団長である加藤伸之さんの挨拶で和やかに始まりましたが、競技の開始とともに緊張が走ります。
まず、5種類の煎茶が「拝見盆(はいけんぼん)」と呼ばれる黒い盆にのった茶葉が出場者に配られ、お湯を注ぐ前の茶葉の状態を観察していきます。
今回は狭山茶、掛川茶、宇治茶、八女茶、嬉野茶と産地の異なる茶葉が使用され、各茶葉に「花、鳥、風、月、客」と銘柄が充てられていました。
出場者は配れた茶葉の大きさ、色、形、香りなどを確かめていきます。
茶葉を手に取り、顔を近づけ香りをかぎます。
茶葉を確認できるのはこの一度きり。
ここでチェックした茶葉の特徴をヒントに飲み当てを行なっていきます。
その後、煎じ手と呼ばれるお茶淹れ役により、抽出時間、温度の条件を一定に揃えたお茶が配られました。
出場者は配られたお茶の色、香り、味わいを確かめ、自身の経験と舌を頼りに、どの産地のお茶なのか答えを導き出します。
1種類目のお茶を飲み終え、出場者は専用の箱に正解だと思う札を投じます。
静かな室内に、カチャンカチャンと札の音が鳴り響きます。5種類すべてを飲み終わると第1回戦の終了。
1銘柄当てると1点を獲得でき、1回戦ごとの満点は5点。4回戦の総合得点により、優勝者が決まります。
進行役により得点数が発表されるなか、「0点」を表す「ちょっと」が読み上げられた際には、声にこそ出さないものの「しまった」と悔しい表情を浮かべる出場者もいました。
競技の休憩中には出場者から「今年は難しい」とささやかれる声が聞かれました。最高段位である茶師十段も参加していたこともあり、難易度の高い問題だったそうです。
最終回も同点が並ぶ接戦のなか、勝敗が決まりました。優勝者は東京・瑞穂町「栗原園」の鈴木敬済さん。
見事3年連続での優勝です。茶葉の生産から製造までを行っているという鈴木さんは「製造のために1日にお茶3リットルを飲むこともありますので自然と鍛えられます」と落ち着いた様子で話しました。
準優勝は「小原園」の小原宜義さん。第三位は東京都・西荻窪「清風園(せいふうえん)」の高橋淳一郎さん。高橋さんは大会に出場する目的として、「お店でお茶を審査するときとは違う緊張感があるので、この場で自分の”ねじを閉めなおす”つもりで受けています」と話しました。
第四位は鈴木智之さん。そして、初出場での健闘を称える「新芽賞」は小学生の君野隆乃佑くんが受賞しました。君野くんは一回戦から満点を叩き出す大人顔負けの活躍でした。
閉会式では東京都茶業青年団理事長の君野信太郎さんが登壇。
「このような機会で自分の技術に自信を付けてもらいたい。そして皆さんがおいしいと思うお茶を、お客様にしっかりとおすすめしてくださいね」とエールを送りました。
東京都茶協同組合
https://www.tokyo-cha.or.jp/
取材・執筆=芦谷日菜乃